公益財団法人福武教育文化振興財団は昨年、創立から25周年を迎えました。四半世紀にわたる教育と文化の振興で培ってきた成果を、これからの地域の未来づくりへと生かしていくプロジェクトとして、平成23年度・24年度の2ヵ年にわたり岡山市東区犬島を主会場にした記念事業「犬島 海の劇場」を実施いたしております。
初年度は、春3月に未曾有の災禍となった東日本大震災と福島原発事故の発生により、記念事業の実施も危ぶまれましたが、フランスから招聘するパフォーマンス事業の中止に留まり、他の創造発信事業と教育普及事業については、犬島の方々をはじめ関係各位のご協力のもとに、無事に計画を遂行することができました。
とりわけ、記念事業の目的として掲げました、犬島の地域資源を生かした演劇(舞台芸術)のプログラムを実施すること、先駆的な作品を創作し犬島から全国へ向けて発信すること、演劇(舞台芸術)の可能性を犬島から地域の学校などへ拡大していくことに取り組み、“演劇(舞台芸術)の島・犬島”の実現に向けた地歩を記すことができました。
こうした成果を踏まえて、次年度平成24年度の事業計画を策定いたしました。引き続き、創造発信事業と教育普及事業を基軸としたプログラムに取り組み、記念事業の目的を達成してまいります。主会場となる犬島では、翌25年度には第2回の「瀬戸内国際芸術祭」も計画されており、記念事業の成果が、瀬戸内海からの新しい文化発信や、地域の希望ある未来づくりへとつながってゆくことを願っています。
犬島には瀬戸内海の美しい自然と景観のなかに、古代から現代にいたる様々な遺跡や遺構や遺産が点在しています。犬島での記念事業「犬島 海の劇場」は、そうした豊かな地域資源と演劇、ダンス、音楽などの舞台芸術が出会い、島の魅力を引き出し、人々の感動を創り出すプロジェクトです。
「犬島 海の劇場」には、ホールのような施設はありません。アクセスも電車やバス、自家用車、船を乗り継いでたどり着かなければなりません。都市の劇場に備わった快適さや便利さはありませんが、海を隔てた天然の劇場にしかない驚きや歓びがあり、訪れるたびに異なるトキメキにあふれています。
私たちは、犬島の季節の変化に目を凝らし、歴史の記憶に耳を傾け、島の暮らしに寄り添いながら、みなさまをお待ちしています。思い立ったその日から——「犬島 海の劇場」の物語は始まっています。